症状別治療方針
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症状一覧

症状別治療方針一覧

symptoms 1

喘息

症状と治療方針

救急医療の現場では、数多くの猫ちゃんが「呼吸困難」を主訴に来院され、一刻も早い治療が必要な場合が多くあります。今回は猫ちゃんの呼吸困難で比較的多い原因である「喘息」についてお話しします。
日本猫の太郎ちゃんは、3歳をすぎた頃からたまに咳をしていましたが、特別な治療は受けていませんでした。4歳になって間もないとある日、いつもより重い咳が2日ほど続いていたものの様子を見ていましたが、呼吸が急に苦しそうになってきたとのことで夜間救急病院へ来院しました。
来院時、太郎ちゃんはチアノーゼ(酸素不足のために舌が青紫色になる状態)を起こしてぐったりしており、非常に危険な状態でした。 直ちに酸素吸入を行いながら、状態が落ち着くのを待ち、胸部X線の撮影と血液検査とオーナー様からの経過の聞き取りを行いました。
X線検査で気管支炎の所見と血液検査でアレルギーを疑う所見があったこと、太郎ちゃんはタバコの煙がこもりやすい部屋で暮らしていたこと等から総合的に判断し、「気管支喘息」と診断しました。
直ちに気管支拡張薬や、抗炎症薬などの投与を行いました。その後、酸素吸入を続けたところ、呼吸状態が改善して、一命を取り留めることができました。このように、気管支喘息は重度になると命に関わることもあるため、症状の変化に注意が必要です。
気管支喘息はアレルゲンの吸入によって、気管が過敏に反応を起こし、気道が狭くなったり、粘液の分泌が増加しておこります。人間と同様に、タバコの煙やハウスダストなどが危険因子と考えられており、環境の改善が喘息の予防には重要です。 もし、ご自宅の猫ちゃんが慢性的な咳をしている場合は、主治医を受診して喘息の兆候がないかの診断を受けてください。日頃からのケアで大切な猫ちゃんとの快適な生活を送りましょう。

産経メディックス ワンパラ 
「ペット高度医療の現場から」 渡利執筆記事より許可を得て転載

symptoms 2

咽頭麻痺

症状と治療方針

愛犬が呼吸の度にガーガーという音を出したり、急に声が変わったように感じたことはありませんか?この症状に関係する喉頭麻痺という病気についてお話しします。
喉頭麻痺は中齢から高齢のラブラドールレトリバー、アフガンハウンドなどの大型犬に多い病気で、程度によっては重篤な呼吸困難を起こし、命に関わる病気です。喉頭麻痺を持つ犬は喉頭と呼ばれる空気の入り口が麻痺することで、空気を十分に取り込むことができなくなり、呼吸困難を起こします。症状が軽いうちは、減量や運動制限などが有効ですが、重症例では「タイバック」と呼ばれる喉頭を恒久的に広げる手術が一般的には推奨されています。しかし、喉頭麻痺を持つ犬は空気の入り口をうまく閉めることができないため、手術後は食べた物が気管に入りやすくなり、命に関わる肺炎リスクが高まることが知られています。以前のホームステイ先にいたケルティちゃん(11歳メスのラブラドール)は喉頭麻痺を持っており、いつもオーナーさんと治療について話しあっていました。興奮した時の症状が徐々に悪くなっていたため、手術を勧めていましたが、オーナーさんは手術に伴う副作用と年齢を考慮し、手術を行わずにダイエットと運動制限で様子を見ることを決めました。
しかし、約半年後のある暑い夏の日、庭に出て興奮したケイティちゃんは呼吸困難に陥り、そのまま亡くなってしまいました。昨日まで元気だった愛犬を突然亡くしたオーナーさんのショックも大きく、もっと手術を強く進めるべきだったと自責の念に駆られました。愛犬の突然の声変わり、異常な呼吸音に気付いたらかかりつけの獣医さんに一度相談して下さい。早めに診断を行い、治療方針を獣医師と共に立てていくことが喉頭麻痺の克服に非常に重要です。ケイティちゃんのような、悲しいケースが少しでも減ることを祈っています。

産経メディックス ワンパラ
「ペット高度医療の現場から」 渡利執筆記事より許可を得て転載

symptoms 3

先天性門脈体循環シャント

症状と治療方針

ご自宅のネコちゃんが、若い頃から発育が悪く、痙攣発作をしばしば起こすという経験はないでしょうか?ネコちゃんの痙攣発作は様々な原因で起こりますが、今回はその原因となり得る先天性門脈体循環シャント(以下、門脈シャント)という病気についてお話しします。
門脈シャントは、肝臓のみに繋がるはずの「門脈」という血管に先天的なバイパスができることによって、本来肝臓へ行くべき血液量が減少し、肝臓の発達が悪くなる病気です。肝臓には栄養素を貯蔵・合成する役割と体内の毒素を分解する役割があるため、この病気を持つネコちゃんは発育が悪く、毒素を分解できないことで起こる神経症状がしばしば認められます。
今まで、ネコちゃんでの発生は稀とされていましたが最近では増えているようです。昔と比べて多くみつかるようになってきたのは、病気のネコちゃんが増えたからではなく、オーナーさん・主治医さんの病気に対する意識と診断技術が向上してきたからではないかと考えています。門脈シャントには内科的な治療と外科的な治療がありますが、先天的な血管連絡の異常を矯正する外科的治療が唯一の根治治療になります。
最近はオーナーさんの意識の向上に伴い、外科的な治療が選択されるケースが増えており、術後に正常なネコちゃんと全く変わらない生活を送る子が増えてきています。こうした予後の良い病気を見逃さないためには、「病気のサイン」を見極めることが重要です。門脈シャントの兆候として、「発育不良」「痙攣発作(特に食後に多い)」の他に「涎が多い」「目(虹彩)の色が赤っぽい」などの特徴がネコちゃんには出やすいといわれています。こうした症状や特徴が認められた際には、まず主治医さんで血液検査を受け、大切なネコちゃんを病気から守ってあげて下さい。

産経メディックス ワンパラ 
「ペット高度医療の現場から」 渡利執筆記事より許可を得て転載

symptoms 4

骨盤骨折

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骨盤骨折は猫の高度医療の現場で見ることの多い病気の一つです。驚くべきことに猫の骨盤骨折は2ヶ月程度安静にしているだけで“自然治癒”してしまうことが多いのですが、そこに潜む落とし穴について今回はお話ししたいと思います。
猫の骨盤骨折は一般的に交通事故によって起こります。骨盤骨折した猫は重度な内蔵の損傷を伴うことも多いため、生命の安定を優先的に行った後に骨折治療の計画をします。日本・アメリカ共に24時間で看護できる病院も増えてきたため、交通事故に伴う重篤な症状の猫を救える事も多くなってきました。しかし、生命維持に集中するあまり骨盤骨折の治療が疎かになると、長期的な生活の質を保つことはできません。
猫の骨盤骨折は手術をせずに治ってしまうケーズも多くありますが、骨盤が変形して治癒することで排便困難になってしまう事も珍しくありません。排便困難が慢性化すると、たまった便によって腸が拡張し、便の送り出しがうまく出来なくなってしまう「巨大結腸症」という病気に発展する事もあります。内科的には、便を柔らかくする薬を飲み続けながら定期的に便を掻き出す治療が一般的に行われますが、この治療は猫と飼い主に負担が大きく生活の質を下げる要因となります。
内科的な治療が奏功しない場合は、骨盤拡大手術や機能の悪化した結腸の切除術等の大掛かりな外科的治療が必要になります。また、症状が慢性化している場合は、手術を行っても大きな改善が認められず継続したないか治療が必要になることもあります。そのため、事故後の早い段階で骨盤骨折の程度を正確に判断し、手術が必要な症例を的確に判断することが重要です。排便は猫の生活の質を大きく左右する重要な問題です。愛猫が不幸にも骨盤を骨折した際には、長期的な視野に立った骨折治療を獣医師と良く相談して下さい。

産経メディックス ワンパラ 
「ペット高度医療の現場から」 渡利執筆記事より許可を得て転載

symptoms 5

前十字靭帯断裂

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今回は、ワンちゃんに多い後足の病気について。ラブラドールレトリバーのラブちゃん(5歳、メス)が、「左足を上げて痛そうに歩く」という主訴で主治医を受診しました。主治医のもとで、鎮痛剤の投与を行ったところ、後足を上げて歩く症状はなくなりました。しかし、薬が切れると足を上げる状態が4カ月間繰り返されたため、精密検査を希望されました。当院で、膝に負担をかける検査(「ドローアーテスト」と呼ばれます)を行ったところ、膝に“ずれ”が生じたため、「前十字靭帯(じんたい)の断裂」と診断されました。前十字靭帯はワンちゃんの膝にある重要な靭帯で、これが切れると膝関節の安定が悪くなって、痛みが生じます。前十字靭帯の断裂は、ワンちゃんに多く見られる後肢疾患の一つで、中高年の肥満大、特にラブラドールレトリバーやロットワイラーなどの犬種に多く発生すると言われています。
急激な運動が原因で突然切れることもありますが、靭帯が徐々に“磨り減った”後に切れることが多いと言われています。今回のラブちゃんも症状の発現状況を考えると、徐々に磨り減って断裂したのではないかと思われます。
前十字靭帯の治療は、体重コントロールが重要なポイント。小型犬の場合は減量のみで普段どおりの生活が送れることも多く、中・大型犬では手術が必要となります。
ラブちゃんは、「頸骨高平部水平化骨切術」という膝関節を安定化させる手術を行い、元通りの生活が送れるようになりました。鎮痛剤など内科療法をしても後肢の痛みが再発するケースでは、前十字靭帯断裂が起こっているケースがしばしばあります。おかしいなと思ったら、なるべく早めに主治医の診察を受け、必要な際は精密検査を受けてください。

産経メディックス ワンパラ
「ペット高度医療の現場から」 渡利執筆記事より許可を得て転載

symptoms 6

肘関節異形成症

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大型犬は、肘関節異形成症と呼ばれる遺伝性疾患の発生率が高い事が知られています。この病気を持つ犬は、肘の骨関節症が進行していくため、早期の外科的治療と保存療法(体重コントロールや必要に応じた抗炎症薬などによる治療)を行う事が一般的に推奨されています。しかし、非常に進行した骨関節症では痛みのコントロールが出来なくなることも稀にあります。このようなケースに対しては、今まで有効な治療法が知られていませんでしたが、肘関節全置換術が有望な治療法として期待されています。肘関節全置換術とは、関節炎でボロボロになってしまった肘関節を人口の器具に置き換え、関節の痛みを軽減する手術です。肘関節の人工関節置換術は以前からおこなわれていましたが、肘関節は非常に構造が複雑な事から、手術の成功率が低いことが知られていました。しかし、2年程前から新しいタイプの肘人工関節を使用し始め、比較的高い成功率を得られるようになってきました。今までどんなに痛み止めにも反応しなかった犬が手術後に元気に走り回るなど、良好な手術効果も確認されています。ただ、依然として手術部位の骨折や感染などの獣欲な合併症の発生も多いことから、この手術が一般的に実施されるには、まだまだ時間がかかりそうです。

産経メディックス ワンパラ 
「ペット高度医療の現場から」 渡利執筆記事より許可を得て転載

symptoms 7

外傷

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ネオ・ベッツVR夜間センターでは、一般の動物病院が閉院している時間帯の救急疾患に対応すべく、夜9時から翌朝5時まで診療を行っています。夜間診療では、様々な主訴でネコちゃんが来院しますが、その中で多く見られる一つが「外傷」です。*交通事故に遭遇した。*マンションのベランダから落下した。*他のネコと喧嘩した。等が外傷の主な理由です。
外傷に伴う救急疾患の対応で重要な事は、付随する頭部・胸部・腹部疾患に対し、緊急性があるかどうかを適切に判断し、初期治療を迅速に行う事です。夜間センターへ来院した雑種ネコのメイちゃん(メス・2歳)の例を元に、夜間救急の現場を紹介します。メイちゃんは、夜11時頃に交通事故に遭遇し、後肢を引きずっているとの主訴で、来院しました。来院時、呼吸が激しく、体温は36.5度と低い状態。血圧の低下が認められ、ショック状態に陥りつつあると判断し、救急措置として血管内への急速点滴や抗ショック用量のステロイド剤の投与をおこないました。
やがて、状態は安定したので、さらに全身的なX線検査を行ったところ、骨盤の一部が骨折していたものの、幸い命に関わるような障害は認められませんでした。その後メイちゃんは、命に別状がない状態まで回復したため、主治医のもとで、骨折を含めた継続治療を受け、今では、元気に走り回る状態まで回復しているとのことです。大けがした時に最も重要なことは、迅速かつ適切に初期治療を受けることです。いつ、救急疾患に陥るかはわかりません。日常から、主治医へ連絡はもちろん、近くの夜間救急病院に連絡を取って、できるだけ早く病院へ行ってください。

産経メディックス ワンパラ
「ペット高度医療の現場から」 渡利執筆記事より許可を得て転載

symptoms 8

痛みの管理

ホームドクターからの紹介症例にのみ対応する専門病院に勤務していた際は、その性質上、来院するワンちゃんの多くが重傷でした。重傷例では、特に痛みを伴うケースが多く、痛みを和らげることが、回復を早め、生活の質を向上させることが知られるようになってきました。今回は「痛みのコントロールについて」お話しします。
大阪在住Sさんと暮らすM・ダックスのハジメちゃんが、「車に轢かれ、激しい痛みを訴えている」と主治医の紹介を受け、来院されました。幸い、すぐに命に関わることはないと診断されましたが、「仙椎」と呼ばれる腰の骨の骨折に伴う激しい痛みが認められました。神経の異常や激しい痛みの出る部位での骨折であり、早急に整復手術をする必要があると判断。術中レントゲン撮影ができる特殊な装置を使う事で、皮膚や筋肉を大きく切開することなく手術が無事終わりました。うまく骨折部位が安定し、手術の傷口も小さかったため、翌朝には、痛みもなく歩けるようになりました。
近年、ペットが家族の一員と認識される事に伴い、ペットの「痛み」に関する研究、特に手術法や周術管理などは飛躍的に進歩してきました。今回のように、術後の痛みをより少なくするような方法での手術も可能になりました。ワンちゃんに対し、痛みにも気を使った治療をすることは今後の伴侶動物医療において、とても大切な事です。
獣医師にとって,専門病院出の診療は辛いことが多いです。理由は多くが重傷で、激しい痛みを訴える子やしんどそうにしている子が多いからです。
しかし、重傷のワンちゃんの痛みが消え、元気そうな顔が見られた時はこの上ない喜びを感じます。こうしたワンちゃんとより多く出会えるように、精進していきたいと思います。

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symptoms 9

糖尿病

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人でも生活習慣病としてよく知られている「糖尿病」がネコちゃんにもおこることをご存知ですか?今回は、高齢のネコちゃんで多発する糖尿病について紹介します。
先日、オスの雑種ネコの金太郎ちゃん(8歳)が、「普段はしない場所で、多量のおしっこをする」という主訴で来院されました。最近、元気・食欲もなくなってきたとのことで、血液検査をすると血糖値が高く、尿検査では、尿糖に加え、ケトン体という物質がでていることがわかりました。命に関わる状態であったことから、金太郎ちゃんは即日入院となり、点滴とインスリン注射の治療を1週間行い一命を取り留めることができました。毎日のインスリン注射が必要なものの、数ヶ月経過した後も元気に生活することができています。
人間と同様に、運動量の割に栄養過剰なネコちゃんが増えてきたことで、ネコの糖尿病の発生率が増えていると感じています。糖尿病は、目立った初期症状がなく、つい見逃しがち。しかし、発見が遅れると、命に危険が生じる病気です。また、糖尿病を発病してしまうとコントロールするため、多くのケースではインスリン注射が必要となります。うまくコントロールできないと、膀胱炎や神経症状など多くの病気が引き続いて起こってきます。栄養のバランスがとれた食事を適切な量与えて、肥満にならないよう心がけることが、糖尿病から大切なネコちゃんを守るのには重要です。
また、飲水量・尿量の増加は典型的な糖尿病のサインであるため、「お水を飲む量やおしっこの量が極端に増えていないか」を注意深い観察することも重要です。加えて、かかりつけの病院での定期的な体重チェック・尿検査・血液検査は、糖尿病の早期発見につながります。肥満が万病の元というのは、人もネコちゃんも同じです。
日頃から体調管理は十分気をつけて、ネコちゃんとの幸せな生活を送ってください。

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symptoms 10

嘔吐・下痢

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今回は、先日あった、本当は怖い「嘔吐・下痢」のお話しです。
オスのシャム猫の大吉君(10歳)が、「最近、嘔吐・下痢が激しく、食欲がなくなってきた」との主訴でホームドクターを受診。血液検査上では問題ないが、食欲不振が続くので、VRセンターへ紹介されてきました。半年くらい前から2日に1回程度の嘔吐があったが、あまり気にしていなかったとのことです。VRセンターでは、おなかの精密検査として、超音波検査・X線検査を行いました。その結果、腸が腫れ、食べ物が通りにくくなっているのがわかり、腸の腫れた部分を切り取り、残った腸を繋げる手術を行いました。手術後、大吉君の食欲は戻り、元気になりましたが、病理検査の結果、小腸がんであることが判明しました。今後は、主治医と連携して対応していく必要があります。
ゆっくりと進行していく「がん」の場合、初期症状があまり出ないので、今回のように飼い主さんがすぐに気づかないケースが良くあります。「がん」は早期の治療で、再発の可能性がぐっと減ります。そのためには、早期発見がとても重要です。*時々嘔吐する *下痢が続いている *体重が減少してきた などの症状は、腸に発生した「がん」の初期症状かもしれません。良くある事だからと嘔吐・下痢を放っておくと、手遅れになってしまうケースがあります。日頃から注意深く様子を観察して、「おかしいな」と思ったら、すぐにホームドクターの診察を受けて下さい。また、必ず、定期検診を受ける習慣をつけて、大切なネコちゃんの健康を守ってあげてください。

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symptoms 11

多発性関節炎

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私たちが診断を行う時にしばしば問題になるのが、症状がはっきりしない病気です。たとえば、後肢を痛そうに上げる。または吐く・下痢するなどのはっきりした症状があれば、どこが悪いのかは分かりやすいのです。しかし、少女ユが分かりにくいものの場合は、どこが悪いのかを突き止める必要があります。こうした分かりにくい症状を示す病気として他院から紹介されることの多いものの一つが「多発性関節炎」です。
「関節炎」と一言で表すと、どこかの肢を痛そうに引きずる病気と考えられがちですが、そういった症状で来院されることはまれで、「熱っぽい」、「食欲不振」「触るとどこかを痛がる」等の症状で来院することがほとんどです。また、この病気は一般的な血液検査やレントゲン検査では異常がでないことが多いため、「異常なし」と診断されるケースが多いと考えられます。
しかし、多発性関節炎に罹患しているワンちゃんでは、全身の炎症を判別する特殊な血液検査の項目(C反応性蛋白)を測定すると高値を示すことが多く、また関節穿刺検査(関節に針を刺し、関節液を抜く検査)を行うと複数の関節に炎症が認められます。複数の関節が炎症を起こすことによって、発熱が起こり、全身が気だるい状態になるため、上記のような症状が認められます。免疫細胞が異常を起こし、自分の関節内の細胞を攻撃する病気のため、免疫抑制剤を一生投与しなければならない場合も多いですが、副作用の少ない量で、病気をコントロールできることがほとんどです。
どの年齢でも起こる病気ですが、一般的には4〜5歳の発症が多く、日本では小型犬での発症が多いようです。早期治療によって見違えるように元気になる事が多い病気なので、「熱っぽい」「食欲が落ちている」などの分かりにくい症状がずっと続く場合には、主治医の診察を受け、病気の兆候がないか検査することをお勧めします。

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symptoms 12

外耳炎

症状と治療方針

これから暖かくなるにつれて増える病気は皮膚病です。今回は、特に外耳炎についてお話しします。
大阪市在住のKさんと過ごす、パグのカイトちゃん(5歳)は、慢性的な外耳炎に悩まされていました。耳を触られる事を非常に嫌がるため、なかなか耳掃除ができず、常に耳を痒がる状態が続いていました。ある日突然、「激しい嘔吐、顔の傾き、四肢のふらつき、目が左右に振れる」等の症状が出たため、ホームドクターからの紹介で、専門病院を受診。頭部CT撮影を行ったところ、耳の奥の内耳と呼ばれる領域まで耳垢がたまり、外耳炎の悪化に伴う重度内耳炎と診断されました。内耳には体のバランスや運動機能を制御する前庭器官があるため、内耳炎がひどくなると、「斜頸(顔の傾き)やふらつき」等の症状が起きることがあります。
外耳から内耳に至る耳垢の洗浄、および抗生剤の投与を行い、やがて症状は改善。カイトちゃんは元通りの元気さを取り戻しました。
外耳炎は放置すると内耳炎を引き起こし、神経症状が現れることがあります。内科的な治療だけでは治らず、「耳道切開術・耳道切除術」など外科手術が必要なこともあります。
外耳炎を起こしやすい犬種では、普段の外耳のケアはとても重要。しかし、間違ったケア(耳掃除など)を行うと、症状を悪化させることがあります。外耳炎かなと思ったら、まずはホームドクターの適切な診断・治療とともに、家庭での外耳ケアの方法を教えてもらってください。
多くのワンちゃんは耳を触られるのを嫌がります。外耳ケアでは、ごほうびをあげるなど工夫をして、嫌な思いをさせないことも大切。たかが外耳炎と油断せず、これからの季節を気持ちよく乗り切ってください。

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symptoms 13

痙攣発作

症状と治療方針

飼い主も非常に辛いと感じる症状の1つに痙攣発作が挙げられます。痙攣発作が起こる原因には様々なものがありますが、今回は猫に起こる「髄膜種」についてお話します。髄膜種とは、脳を覆っている「髄膜」が腫瘍化する病気です。9歳以上の猫での発生が多く、髄膜種が脳を圧迫する事によって様々な神経症状が出ます。痙攣発作は典型的な症状ですが、その他にも発生部位に応じて盲目や性格の変化などの症状が見られます。髄膜種は比較的ゆっくりと大きくなる腫瘍であるため、症状が出たときに検査をすると非常に大きな腫瘍がみつかることもしばしばあります。それでは、不幸にも飼っている猫がこの病気になってしまった時はどうずれば良いでしょうか?一般的には、内科的な治療での延命は難しく、外科的治療や放射線治療が推奨されています。猫の髄膜種は比較的取りやすい場所に、政情組織との協会が明瞭な状態で発生する事が多いため、摘出手術が最善の治療法と考えられています。「脳の周りに腫瘍ができる」というと、一昔前までは手のつけられない病気というイメージがあったかもしれません。しかし、MRIやCTなどの診断機器の発達によって、腫瘍の場所を性格に特定して安全な手術を行うことが可能になってきました。脳外科の分野では、手術の実施が困難で治療を諦めざるを得ない病気もまだまだ多くありますが、猫の髄膜種は治療が可能な病気です。このように治療可能な病気を一つ一つ増やしていく事が、これからの高度獣医療に求められる事であると考えています。飼っている猫が痙攣発作を頻繁に起こす場合は、髄膜種の可能性があります。まずは主治医を受診し、必要があればMRIなどの検査を受けて下さい。早期診断・早期治療で、1匹でも多くの猫を救えることを願って止みません。

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symptoms 14

繊維肉腫

症状と治療方針

整形外科だけで治療が完結することの多い骨折治療とは違い、腫瘍の治療では多くのケースで3科(外科、内科、放射線科)の連携が必要になります。
3科連携の良い例であアメリカ猫のゲイリー君(7歳)は腰の大きながんを取って欲しいということで、主治医さんから紹介されてきました。ゲイリー君は、外科的手術のみでは再発率の高い繊維肉腫という悪性腫瘍と診断されたため、腫瘍内科医および放射線腫瘍科医と相談しながら綿密な治療計画が立てられました。
手術だけでなく正確に計算された放射線治療と抗癌剤治療をおこなった甲斐もあり、ゲイリー君は治療に伴う重篤な副作用や腫瘍の再発も長期間なく元気に暮らすことができています。
放射線治療や抗癌剤治療は専門的な知識を要求される治療分野であり、使い方を間違えば命に関わる危険性もあります。そのため、最高水準の治療をおこなうためには、ゲイリー君の例のように各科を深く追求したスペシャリストがそれぞれ協力し合いながらオーダーメイドの治療を組み立てることが理想的であると感じました。日本では国で定められた専門医制度が未だ確立されていないため、専門家のいる一部の施設を除き、試行錯誤でこういった専門治療に取り組んでいる実情あります。
また、放射線治療施設の数も限られており、設備面からも複合的な腫瘍の治療を行うことが難しいという現状があります。しかし、近い将来日本でも専門医制度や放射線治療機が整備され、腫瘍に関するよりきめ細かい治療が可能になってくることでしょう。日本の腫瘍治療システムが整い、ゲイリー君のような猫が少しでも多くなることを祈るばかりです。

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symptoms 15

髄膜種

症状と治療方針

ネコも飼い主も非常に辛いと感じる症状の1つに痙攣発作が挙げられます。痙攣発作が起こる原因には様々なものがありますが、今回は猫に起こる「髄膜種」についてお話しします。
髄膜腫とは、脳を覆っている「髄膜」が腫瘍化する病気です。9歳以上の猫での発生が多く、髄膜種が脳を圧迫する事によって様々な神経症が出ます。痙攣発作は典型的な症状ですが、その他にも発生部位に応じて盲目や性格の変化などの症状が見られます。髄膜種は比較的ゆっくりと大きくなる腫瘍であるため、症状が出たときに検査をすると非常に大きな腫瘍が見つかることもしばしばあります。それでは、不幸にも飼っている猫がこの病気になってしまった時はどうすれば良いでしょうか?一般的には、内科的な治療での延命は難しく、外科的治療や放射線治療が推奨されています。猫の髄膜種は比較的取りやすい場所に、正常組織との境界が明瞭な状態で発生する事が多いため、摘出手術が最善の治療法と考えられています。「脳の周りに腫瘍ができる」というと、一昔前までは手のつけられない病気というイメージがあったかもしれません。しかし、MRIやCTなどの診断機器の発達によって、腫瘍の場所を正確に特定して安全な手術を行う事が可能になってきました。脳外科の分野では、手術の実施が困難で治療を諦めざるを得ない病気もまだまだ多くありますが、猫の髄膜種は治療が可能な病気です。このように治療可能な病気を一つ一つ増やしていく事が、これからの高度獣医療に求められる事であると考えています。飼っている猫が痙攣発作を頻繁に起こす場合は、髄膜種の可能性があります。まずは主治医を受診し、必要があればMRIなどの検査を受けてください。早期診断・早期治療で、1匹でも多くの猫を救えることを願ってやみません。

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symptoms 16

MRI検査

MRIは磁気を使うためX線被爆もなく低侵襲で、特に脳神経疾患の診断に非常に有用であるという特徴があります。当院ではMRI撮像を通して、ワンちゃんに非常に多くの脳神経疾患が存在することがわかってきました。
脳内の疾患では、特定の犬種で多くみられる「脳炎・水頭症」や高齢で多くみられる「脳腫瘍」といった病気から、一昔前まではワンちゃんは罹病しないと言われていた「脳梗塞」まで、様々な病気の診断が可能です。また、ミニチュア・ダックスなどの犬種で多くみられる「椎間板ヘルニア」や高齢でまれに認められる「脊髄腫瘍」などの診断にMRI検査では非常に有用です。しかし、ワンちゃんのMRI検査には人間と違って麻酔が必要なため、本当に検査が必要な病気かを見極めることも重要です。
ご自宅のワンちゃんに、痙攣発作、ふらつき、斜頚(首が傾く)、性格・行動の変化など脳疾患の症状がある際には注意が必要です。また、後肢や四肢の麻痺、首や腰の痛みなどは椎間板ヘルニアなどの脊髄疾患の症状です。こうした症状が認められたら、まず主治医の診察を受け(似た症状を示すのに違う病気のこともあります!)、必要があると主治医が判断した際にはMRI検査を受けてください。
以前は診断機器そのものがなかったため、多くが「老衰」や「ぼけ」と診断されていた脳神経疾患も、診断機器の進歩とともに診断可能なものが増えてきています。また、治療技術も進歩しており、治療可能な病気も非常に多くなりました。
「看取る病気」から「治る病気」へと変わりつつある脳神経疾患は、今後獣医師が取り組むべき重要な課題だと考えています。

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「ペット高度医療の現場から」 渡利執筆記事より許可を得て転載

symptoms 17

CT検査

CT検査(CT)とはX線を使い、生体の連続的な断層画像(輪切り像)を得ることができる装置です。
新しいCTでは、非常に薄い幅(最小0.5mm)の輪切り像を撮影する事も可能で、腹部・胸部・四肢など様々な部位の病変を発見することが容易になりました。
CTの特徴はメスを入れずに広範囲を素早く検査出来るという点にありますが、特殊なソフトを用いることで立体的な画像や血管のみを浮き上がらせる画像などの特殊画像を構築する事も可能です。我々は、こうした特殊な機能を併用する事で、腫瘍やその転移病変の確認、先天的な血管異常の検出、骨折の手術計画などにCTを活用しています。また、特殊なCTを利用すると,従来不可能だった心臓の撮影まで実施することが可能です。
しかし、動物のCT検査には麻酔が必要(撮影中に被検動物が動くと画像が乱れ、正確な診断ができないため)な事もあり、簡便さ・費用などの面で、獣医界ではまだまだハードルの高い検査の一つです。
また、機械の操作・画像の読影に熟練した技術者を確保しにくい夜間救急の現場では、検査の実施自体が困難です。このような現状はありますが、痛みや不調を自身で訴える事が出来ない動物にとって、広範囲を客観的に調べる事ができるCT検査は非常に有用な検査です。動物に対する負担減少、検査精度が可能なCT検査についてご不明な点があればお気軽にお問い合わせ下さい。

産経メディックス ワンパラ 
「ペット高度医療の現場から」 渡利執筆記事より許可を得て転載

symptoms 18

抜爪

症状と治療方針

今回は猫ちゃんの抜爪についてです。
皆さんは抜爪手術をご存知でしょうか?爪を根元(実際は指の第一関節にあたる場所)から取り、爪が再生しないようにする手術です。猫の爪から起こる病気(バルトネラ感染症)やけが、家具の損傷などのリスクを軽減するために行われることがあります。
しかし、手術に伴う痛みや猫を人間の都合の良いように扱うべきでない等の倫理的な理由から、日本を含めた多くの国でこの手術が否定的に捉えられることが多いのが実情です。
ですが、免疫抑制の治療を必要とする飼い主が、感染症のリスクを軽減するためにやむなく愛猫の手術に至った。猫を飼育する家庭で赤ちゃんが生まれ、感染やけがに弱い赤ちゃんと猫が仲良く暮らせるように手術を行った。こういった例では、猫が傷みを感じるので抜爪を禁止すべきだという一元的な観点だけでは猫と飼い主両方の幸せを考えることはできないと思いました。抜爪手術は感情論が先行しがちであり、全面禁止や全面賛成などの両極端に意見が分かれがちです。しかし、こういった複雑な要素が絡んでくる例では、家庭環境などを考慮して柔軟に処置を検討していくべきではないかと感じております。

産経メディックス ワンパラ 
「ペット高度医療の現場から」 渡利執筆記事より許可を得て転載

symptoms 19

アメリカの教育システム

2008年7月から、ミシガン州立大学・外科フェローシッププログラムに1年間参加することになりました。私は外科診療科を中心にローテーションし、各診療科の診察、検討会、手術へ参加しています。そこで、今回は、ミシガン州立大学で感銘を受けたアメリカの教育システムについてお話をしたいと思います。
アメリカの獣医科大学病院は一般的に「教育病院」と銘打っており、文字通り教育に力を入れています。教育病院では、まず始めに学生が1次診察を行い、その後に教員が2次診察を行い最終的な診断を下します。学生は担当した症例を教員とディスカッションする中で、今まで講義で学んだ知識を応用する能力を身につけます。
私が最も感銘を受けた点は、こうした臨床現場における教育で、学生と教員の距離が非常に近く、個々の症例で非常に深い検討がなされている点です。
また、アメリカ獣医科大学の教員はほぼ全員が専門医の資格を持っており、豊富な知識を背景に学生を徹底的に教育している事も特筆すべき点です。そして、こうした非常に高い教育システムで育った学生が、専門獣医療の担い手と地域獣医療の担い手に別れ、アメリカの高度獣医療を支えているのだなと感じました。一方、日本の獣医科大学では教員数の限界などの問題からこうしたアメリカの教育システムを実現する事が難しいと言う現状があります。
しかし、日本における格差の少ない高度獣医療の実現のためには、こうした教育システムの確立が重要である事は間違いありません。もちろん、アメリカ獣医療が全ての面で優れているわけではありませんが、この留学で学ぶ事は非常に多く、外から日本の獣医療を見直す良いきっかけになりました。アメリカで多くの事を吸収し、将来的には自身が日本の高度獣医療の一翼を担えるようになりたいと切に願っています。

産経メディックス ワンパラ
「ペット高度医療の現場から」 渡利執筆記事より許可を得て転載

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